もし、相続人から遺留分侵害額請求をされたらどうすればいいのでしょうか?
受遺者又は受贈者は、現物返還すべきでしょうか、あるいは価額弁償すべきでしょうか。
遺留分は相続人に保障された権利ですから、正当な請求である場合は遺留分を返還しなければなりません。
原則として現物を返還しなければなりませんので、現金の場合は、相続財産または自分の資産の中から現金を支払います。
民法1036条は、「受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以降の果実を返還しなければならない」と定めており、「現物返還」を前提としています。
しかし、不動産などの場合は、減殺を受けるべき限度で遺留分の相当額を支払って、現物の返還義務を免れることができます。
民法1041条は、「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して、現物返還の義務を免れることができる」と定めています。
最高裁第2小法廷昭和51年8月30日判決(民集30巻7号768頁)は、「現実に弁償がなされる時の目的物の価額であり、また、遺留分権利者において当該価額弁償を請求する訴訟にあっては現実に弁償される時に最も接着した時点としての事実審口頭弁論終結時である」と判示しています。
遺留分侵害額請求の結果、相続財産について減殺者と受遺者又は受贈者との間で共有関係が生じた場合、共有関係はどのように解消すればよいのでしょうか。
最高裁第2小法廷平成8年1月26日判決(民集50巻1号132頁)は、特定遺贈や全部包括遺贈に対して遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行使した場合は、遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないことを理由として、遺留分侵害額請求の結果生じた共有関係の解消は、共有物分割手続きによることになると判示しています。
一方、相続分の指定の遺言や割合的包括遺贈に対して遺留分権利者が遺留分侵害額請求権を行使した場合は、請求の結果生じた共有関係の解消は、遺産分割手続によることになります。
民法258条2項は、共有物分割の方法として、「現物分割」と「競売による換価分割」を定めています。
判例では、共有物分割の方法としてより弾力的な運用がされており、最高裁第1小法廷平成8年10月31日判決(民集50巻9号2563頁)は、減殺請求者に減殺対象財産を取得させ、受遺者(受贈者)に持分の対価を取得させることとしても両者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、減殺請求者が減殺対象財産を取得できる場合があると判示しています。
遺留分の算定や相続財産の評価は非常に難しく、仮に他の相続人から遺留分侵害額請求を受けた場合であっても、相手方の請求に根拠があるか否かについて正確な判断は難しいと思います。
他の相続人から遺留分侵害額請求をされた際には、多くの遺言、相続の案件を手がけてきた当事務所へご相談ください。
まずその請求が正当なものであるか、また対処法について的確なアドバイスをいたします。
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