弁護士 杉浦恵一
近年の少子化により、相続人がいない状態で亡くなる方が増えているようです。報道機関が裁判所に取材したところによれば、2023年度の相続人がいないことで国庫に入った財産額が約1015億円に達しているということでした。 2013年度の相続人がいないことで国庫に入った財産額が約336億円だったということですので、相続人がいないことで国庫に入る金額は年々増え続けているようです。
民法で定められた法定相続人の順位は、第1順位が子(などの直系卑属、民法887条)、第2順位が親(などの直系尊属、民法889条)、第3順位が兄弟姉妹(同条2号)という順番になっています。
被相続人(亡くなった方)に配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人となり(民法890条)、他に相続人がいるか否か、他の相続人が子、親、兄弟姉妹のどれに当たるかで配偶者の法定相続分は異なってきます。
このような相続人が全くいないか、又は相続人の全員が相続放棄をしたような場合には、相続人がいなくなります。
相続人がいなくなった場合には、亡くなった方の遺産はどのようになるのでしょうか。
まずは、遺言書がある場合を考えてみます。
遺言書は、亡くなる方の最後の意思表示ということで、最大限に尊重されるべきと考えられますが、あくまで亡くなる方の財産や祭祀承継など、法的に決められる点については限度があります。
相続人がいても、いなくても、遺言書を作ることは可能です。
相続人がいない場合には、相続人以外の誰か(法人、団体も可)に財産を残すという内容にすることができます(「遺贈」といいます)。
このような遺言があれば、遺贈をされた方(団体)はその遺言の内容に従って財産を受け取ることができますし、内容によっては遺贈を受けないことも可能です。
ただし、遺言書の場合には、その遺言が必ずしも見つかるとは限りません。
自筆の遺言があっても、一人暮らしなどで見つけられず、いずれ廃棄処分にされてしまう可能性はありますし、自筆の遺言を法務局に預けていたり、公証役場で公正証書遺言を作っていた場合でも、誰も把握していなければ検索されずに終わってしまう可能性もあります。
相続人がいない(はっきりしない)場合には、民法上、相続財産清算人を選任することになります。
民法951条では、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」とされ、同952条では、「前条の場合には(注:相続人があることが明らかでないとき)、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。」とされています。
そのため、相続人ではなく、遺言で受遺者にも指定されていないが、一定の利害関係がある場合には、裁判所に相続財産清算人の選任を申立てし、相続財産清算人に財産処分などをしてもらうことが考えられます。
この際に、財産があることが不明な場合や財産が少ない場合には、裁判所に予納金を納める必要がある場合もあります。
相続財産清算人の選任を申し立てるのは、債権者(住居が明け渡されなくて困っている賃貸人など含む)や、特別縁故者の可能性がある方が多いようです。
相続財産清算人は、選任されますと相続人を探しつつ、財産を調査し、財産の処分などを行っていきます。
そして、相続人が見つからない場合には、負債があれば債権者に弁済する等をして、残りを国庫に納めます。
このような手続きを経て国庫に入る金額が、近年では1000億円超になっているそうです。
また、相続人がいない場合でも、特別縁故者だと主張する方がいれば、一定の期間内であれば財産を分与するように申し立てることが可能です。
民法958条の2では、「前条の場合において(注:相続人としての権利を主張する者がいないとき)、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」とされています。
つまり相続人ではなくても、被相続人の療養看護に務めたとか、何らかの特別の関係にあった場合には、遺産を分与するように求められます。
例としては、相続人ではない血縁関係が多少離れた親戚や内縁関係の方が多いようです。
ただし、どの範囲で分与するかは裁判所の裁量と考えられていますので、必ずしも全部が分与されるとは限らず、一部しか認められない場合や全く認められない場合もあります。
このように、今後は相続人がいないという事例が増えていくことが予想されますので、そのような場合も想定をしておく必要があるでしょう。
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