使用借権とは、使用貸借(無償で他人の物を借りて使用収益する契約)をする権利のことを言います。
使用貸借についての基本的なルールは、民法593条以下に定められています。
改正593条
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
使用貸借は、無償で貸して、使用収益をした後に返還してもらうという点が特徴的な契約であり、借主と貸主の信頼関係を基礎として成り立つ契約といえます。
民法では、借主が死亡した場合について以下のとおり定められています。
民法599条
使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。
上記⑴で述べたとおり、使用貸借は借主と貸主の間の信頼関係によって成り立つ契約であるため、借主が死亡した場合には、契約は効力を失ってしまうのです。
契約が効力を失う以上、借主の相続人が使用借権を相続することはあり得ません。
もっとも、不動産は、他の財産と異なって人の生活の基盤・根拠という特質を有するため、民法の規定をそのまま適用すると借主の相続人に酷となる場合があります。
そこで、裁判例の中には、民法599条の例外として、使用貸借の承継が認められたものが存在しています。
以下で何件か裁判例をご紹介いたします。
東京地判平成5年9月14日
「民法上、使用貸借契約は、借主の死亡によってその効力を失うとの規定が存する(同法599条)。
しかしながら、同規定は、使用貸借が無償契約であることに鑑み、貸主が借主との特別な関係に基づいて化していると見るべき場合が多いことから、当事者の意思を推定して、借主が死亡してもその相続人への権利の承継をさせないことにしたにすぎないものと解される。
そして、土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、
当事者間の個人的要素以上に式地上の建物所有の目的が重視されるべきであって、特段の事情がない限り、
建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当であるから、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了するということにはならないというべきである。」
東京地判平成元年6月26日
「建物の使用貸借の借主が貸主の妹の夫であり、その家族の居住を確保する目的である場合において、借主の死亡は直ちに契約の終了事由とはならないが、
使用期間が40年を経過し、借主の長男も妻帯しているような事情では、使用収益をなすに足るべき期間が経過して終了したものであるとして被告に対しその明け渡しを求めるのは、理由のあるものということができる。」
東京高判平成13年4月18日
「民法599条は、借主の死亡を使用貸借の終了原因としている。
これは使用貸借関係が貸主と借主の特別な人的関係に基礎を置くものであることに由来する。
しかし、本件のように貸主と借主との間に親子同然の関係があり、貸主が借主の家族と長年同居してきたような場合、貸主と借主の家族との間には、貸主と借主本人との間と同様の特別な人的関係があるというべきであるから、このような場合に民法599条は適用されないものと解するのが相当である。」
使用借権の地位の相続が問題となった場合、上記⑶でご紹介しました裁判例と同じような事情があれば民法599条の適用が否定され、相続人に使用借主としての地位が承継されることになります。
弁護士としては、最高裁判所で争われて確立した判例がない分野であることから、ご相談を受けたそれぞれの事案について、上記裁判例と照らし合わせて検討し、上記裁判例の射程が及ぶ範囲か否か、使用借権の相続が発生する事案か否かについて丁寧に検討していきます。
用借権の評価については、明確な基準はありませんが、一般的には、地上建物が非堅固建物(木造・軽量鉄骨など)の場合には使用借権の価値は更地価格の約1割と評価され、堅固建物の場合には使用借権の価値は更地価格の約2割と評価されることが考えられることがありますが、どのような使用借権が設定されているか検討した上で、使用借権としてどの程度保護されているか判断し、個別具体的に評価すべきと思われます。
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