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弁護士 杉浦恵一
※こちらの記事は2023年6月30日までの情報を元に作成しています。執筆時点以降の事情変更により記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。
引用しているウェブサイトについても同様にご注意ください。
世の中では、長い間にわたって遺産分割がなされておらず、先祖の名義のままになっている土地などもあるのではないかと思われます。
そのような場合でも、民法上は遺産分割そのものに期限はなく、遺産分割自体が時効でできなくなるというわけでもありません。
そのような場合に、遺産分割までの期間が延びるデメリットはないのでしょうか。
デメリットがあるとすれば、以下のような場合が考えられます。
遺産分割自体に期限や時効はないと説明しましたが、遺産に含まれる権利は別に消滅時効になる場合があります。
例えば、被相続人が誰かに金銭を貸していた場合、これは「債権」、つまり金銭を支払ってもらえる権利として遺産に含まれます。
債権は通常、可分であり、相続開始の時点で法定相続分によって分割されているという解釈が一般的かと思われますが、遺産分割協議によって相続人のうち誰が相続するかを決めることも可能です。
このような債権が遺産に含まれている場合には、債権の消滅時効もありますので、遺産分割が終わらないうちに債権が消滅時効によって請求できなくなる、遺産としての価値がなくなる場合も考えられます。
そのようにならないように、債権が遺産にある場合には、消滅時効にならないように注意が必要です。
遺産分割をしないまま時間が過ぎますと、相続人が亡くなり、その相続人の更に相続人と遺産分割協議をせざるを得なくなる場合もあります。
相続人が増えると、それだけで連絡や調整の手間がかかりますので、時間がかかって相続人が増えるような場合には、デメリットになるでしょう。
民法の改正により、民法903条の3が新設されましたが、その条文は以下のような内容になっています。
(期間経過後の遺産の分割における相続分)
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
ここでいう「前三条の規定」とは、特別受益の規定(民法903条)と寄与分の規定(民法904条の2)が該当します。
つまり、相続開始から10年を経過した後に遺産分割をする場合には、徳部儒受益(生前贈与等)や寄与分(生前の介護等)があっても、考慮されずに原則として法定相続分で遺産分割をせざるを得ないことになってしまいます。
遺産分割は当事者の話し合いによって解決できれば、そちらが優先しますので、特別受益や寄与分があったことを前提に遺産分割協議を成立させるのは問題がありません。
しかし、相続人の誰かが特別受益や寄与分を認めず、争いになった場合には、相続開始から10年を経過すると、裁判所で特別受益や寄与分を判断することができなくなりますので、その点は注意が必要でしょう。
遺産分割をする場合、原則として分割時に存在している遺産を分けることになりますが、特別受益(生前贈与など)や寄与分(生前の介護など)で相続分が変動する場合もあります。
実際に特別受益や寄与分があるような場合であっても、他の相続人が否定すれば、特別受益や寄与分があることを証明する必要があります。
例えば特別受益であれば、預金の入出金履歴を見ることで生前贈与が分かる可能性もありますが、金融機関はいつまでも入出金履歴を残しておかない場合が多いようです。
このような場合、せっかく有利な事情があっても、証拠がなくなってしまって証明できないという事態もあり得ますので、そのような場合には注意が必要でしょう。
上記のような場合を考えると、よほど例外的な場合でなければ、一般的には遺産分割は先延ばしをせずに、早めに行った方がいいと言えるでしょう。
弁護士 杉浦恵一
令和3年に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が制定され、土地所有権を国に引き取ってもらう制度が新設されました。
それまでは土地の所有権を一方的に放棄することはできないと解釈されていましたので、相続等で使用する予定がない土地・使い道のない土地を取得しても、そのまま放置され、誰が所有者なのか分からない状態になることが増えていました。
このような状態を解消し、所有者不明土地を減らすための施策の一環として、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が制定されましたが、未だ実際の運用はなされていませんでした。
この法律ですが、ついに令和5年4月27日から制度が運用開始されることになりましたので、使い道のない土地の処分に困っている場合には、この制度を使うことで土地管理の負担を免れることができる可能性もあります。
まず、対象は土地のみであり、建物や動産などは対象外です。
また、対象となる土地も、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限るようです)で取得した土地が対象であり、売買や贈与などの取引行為によって取得した土地は対象外のようです。
そのため、土地を買ってはみたが使い道がなかったので国に土地を引き取ってほしいというような場合は、この制度は使えないようです。
(※共有の土地で、他の共有者が相続により共有持分を取得した場合には、売買等の取引によって土地持分を取得した他の共有者も、相続等により共有者となった方と共同申請をすれば、国庫帰属制度を使うことができるようです。同法2条2項)。
この相続土地国庫帰属制度を使う流れとして、以下のような流れが説明されています。
また、土地ならどのような土地でも国庫帰属させることができるかといえば、そのようなことはなく、以下のような土地は国庫帰属させることができない(申請が不承認になる)とされています。
といった土地は国庫に帰属できない土地の例として挙げられています。
大きな問題がない土地であれば、第三者に売却して解決できる可能性がありますので、そのような問題がない土地ではなく、処分できないやっかいな土地は、上記の要件のうちどれかにあてはまる可能性が十分に考えらえます。
そうしますと、相続土地国庫帰属制度の対象になる土地は、思ったよりも限られてくる可能性があります。
法務省のQ&Aでは、農地や山林であっても、除外される要件に該当しなければ相続土地国庫帰属制度の対象になるとされていますので、農地でこの制度を使いたい方は多いかもしれません。
これ以外に、相続土地国庫帰属制度を使うためには、10年分の管理費用の額に相当する負担金を納付しなければならないとされています。説明では、基本的な金額が20万円とされていますが、土地の種類、地域、面積などによっても変わってくるようです。
詳細については、法務省からの案内(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html)に掲載されていますので、そちらが参考になるでしょう。
これから始まる制度ですので、運用によって使いやすさに違いが出てくるとは思われますが、今まで認められなかった土地所有権の放棄が認められるのに近い制度が始まりますので、どのような運用がなされるか注意が必要でしょう。
Aさんは配偶者に先立たれましたが、相続人はAさんと子だけでした。
Aさんは、配偶者の遺産を分割しようと子と話をしましたが、子は、Aさんが生前に贈与を受けているとか、自分に寄与分があると言って譲らず、遺産分割が進みませんでした。
そこでAさんは、遺産分割を進めるため、当事務所に相談にいらっしゃいました。
当事務所では、子の態度からすると当事者間の話し合いでは解決しないと思われたことから、遺産分割調停を申立て、裁判所の主導で、子に対して、特別受益の金額及び内容を書面で具体化させることや、寄与分の内容を具体化し、寄与分の申立てをするように促してもらいました。
その結果、子から具体的な請求の内容を明確にしたことで、主張内容に開きが多かったことから、調停を不成立にして、審判を出してもらい、特別受益も寄与分も認めない内容で遺産分割をすることができました。
約2半年
相続人の1人が特別受益(生前贈与)や寄与分を主張した場合、具体的な相続分が変わる可能性があります。
このような内容に争いがあれば、当事者間の話し合いで解決をすることが難しい場合が多いですので、遺産分割調停を申立て、最終的には裁判所に判断してもらった方がいい場合もあります。
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Aさんの父親は、投資物件を複数所有しており、兄弟間でその遺産分割をどのようにするか揉めていました。
Aさんとしては、早く解決をしたい意向でしたが、兄弟がきちんと連絡をしないことから、遺産分割が進まない状態でした。
そこでAさんは、対応を相談するため、当事務所に相談にいらっしゃいまいた。
当事務所では、話し合いでは進まないと考えられたことから、速やかに遺産分割調停を申立て、裁判所で話をして、遺産分割案を積極的に提示していきました。
それに対して、兄弟が応じる様子を見せなかったことから、裁判所に対して速やかに調停を不成立にして、審判を出してほしいと何度も求め、結果として比較的早期に審判で遺産分割されました。
約2年
遺産分割は、相続人間で揉めた場合には、かなりの時間を要することが予想されます。
2、3年くらいかかることもよくありますので、早めに決着をつけたい場合には、早めに遺産分割調停を申し立てた方がいい場合もあります。
弁護士 杉浦恵一
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国際化の進展により、日本人が国外に居住し、そのまま居住国に帰化する事例や、外国人が日本に居住し、日本に帰化する事例が増えてくる可能性があります。
このような場合、全ての当事者が日本に住んでいる日本人である場合に比べて、誰かが外国籍の場合や誰かが外国に居住している場合、帰化している場合には、手続きが非常に煩雑になる可能性があります。
法律は国によって異なりますので、相続が発生した際に、どの国の法律が適用されるのかという問題があります。
場合によっては、日本の法律が適用されない場合も考えられます。
まず、どの国の相続に関する法律が適用されるのかですが、この点は日本の法律では、「法の適用に関する通則法」という法律が適用されます。
この法律の36条では、「相続は、被相続人の本国法による。」という定めがされていますので、日本に住んでいても、外国に住んでいても、被相続人(亡くなった方)の国籍のある国の法律が適用されることになります。
ちなみに同じ法律の37条では、遺言に関して、1項で「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。」と定め、2項で「遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。」と定めています。
そのため、遺言に関しては、仮に外国籍の方が、日本の民法に準拠した方法で遺言書を作成しても、その国籍のある国の法律では無効となる可能性もありますので、注意が必要です。
また、日本で遺産分割の取り決めができるかどうかですが、手続き上の問題があります。
例えば日本では、遺産分割協議書に実印を押印し、かつ印鑑登録証明書を添付するという運用がなされています。実印の押印+印鑑登録証明書によって相続人の意思確認をするという運用なのですが、相続人が海外に住んでいる場合、印鑑登録がない国が大半だと思われます。
そのような場合に、いったん日本に戻って来て、日本で住民登録と印鑑登録をした上で印鑑証明書を発行するのは非常に煩雑になります。
このような場合には、一般的には、相続人が国外に居住する日本人であれば、その国の日本大使館等の在外公館で署名証明(サイン証明)をしてもらい、それをもって印鑑証明に代えることが多いようです。
しかし、相続人が外国籍になっていると、このような署名証明(サイン証明)がない可能性もありますので、注意が必要でしょう。
なお、裁判所の手続によって遺産分割を行う場合には、日本の裁判所に管轄があるかどうかについて、家事事件手続法第3条の11で
つまり、被相続人の住所が日本国内にあれば日本の裁判所で遺産分割の手続をすることが可能ですが、逆に言えば、国外に住んでいると日本の裁判所では遺産分割事件を取り扱うことができない、ということになります。
これ以外にも、例えば外国から日本に帰化し、日本に住んでいる際に亡くなった方の相続であれば、特に問題はないというわけではありません。
日本の相続手続では、一般的に生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を確認して、相続人が誰かを確定する必要があります。
しかし、途中で日本に帰化した方は、帰化した後からの戸籍しか日本にはありません。帰化によって親子関係や相続人が変わるわけではありませんので、相続人を確認するためには、帰化前に国籍があった国で、何らかの公的な相続関係・家族関係の分かるような書類を集めることが必要になります。
しかし、戸籍というのは日本など一部の国だけのようですので、相続関係を確認するために非常に労力がかかる(場合によっては確認できない)ことになりそうです。
このようなことがありますので、将来的に相続で問題が発生しそうな場合には、きちんと遺言を作っておき、戸籍の有無などで相続手続きに支障が出ないようにした方がいいでしょう。
遺産は不動産のみでしたが、生前に多額の預金が引き出されていました。
依頼者は、当初、預金の引き出しについてご自身で裁判を起こそうとしたようですが、裁判所から弁護士に相談するように言われとのことで、当事務所に相談にいらっしゃいました。
双方に弁護士がつき、遺産分割のなかで預金の引き出しもまとめて解決する方向で協議を重ねました。
双方に弁護士がつき、遺産分割のなかで預金の引き出しもまとめて解決する方向で協議を重ねました。
このなかで、不動産については、被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例の適用できる期間の満了が迫っていたことから、相続人全員が特例のメリットを受けるべく、協力して売却をすることにしました。
そうした流れのなかで、預金の引き出しについても、双方が譲歩のうえ、遺産分割をまとめることができました。
不動産の売却については、相続人及び買主が仲介業者を入れないことを望んだため、弁護士が売却の手伝いをすることにより、売却にかかる費用を減らすことができました。
約2年
不動産の売却については、当グループの司法書士が、空き家控除の特例については、当グループの税理士が担当して、スムーズに進めることができました。
当事務所の強みを発揮することでよい解決ができた事案だと感じました。
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
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